NHKはなぜインターネットに取り残されたのか

 NHKのインターネット同時配信を可能にする改正放送法が、5月29日に成立した。これによって今まで災害報道などに限られていたNHKのネット同時配信が、総合テレビ・Eテレのすべての番組に拡大され、放送と同時にPCやスマートフォンでも見られるようになる。

 日本のテレビ番組が、インターネットで見られないのは異常である。普通の先進国では、ネット同時配信は常識で、技術的には容易だ。NHKもかねてから同時配信したいという意向を示してきた。どうしてこんなことになったのだろうか?

ネット同時配信で受信料は「視聴料」になる

 NHKのネット配信は今年度中に始まる予定だが、NHKのウェブサイトやスマホのアプリで提供されることになろう。注目されるのは受信料だが、NHKは「受信契約を結んでいる世帯は追加の負担なしに利用できる」という。つまりテレビをもっていて受信料を払っている世帯は、ネット受信料を払う必要がないわけだ。

 しかしテレビをもっていない人が、スマホで受信したらどうなるのだろうか。これについてNHKは公式に発表していないが、受信料を払っていない人が見ようとすると「契約を促すメッセージが表示される」予定だという。受信料を払ったかどうかはどうやって確認するのだろうか。

 ワンセグ放送では、ワンセグチューナーのついた携帯電話をもっていると、NHKを見ていなくても「受信機」を設置したとみなして受信料を取られるが、アプリになると、どんなスマホでも受信できるようになる。

 すべてのスマホを受信機とみなして受信料を取ると、スマホユーザーから反発を受けるので、受信料を払っている世帯のスマホだけが受信できる仕組みが必要だ。これは技術的には容易で、今の衛星放送のように番組をメッセージで見えないようにして放送し、受信料を払った世帯だけメッセージを消せばいい。

 しかしこれは受信した人から広く徴収する受信料ではなく、見た人だけから徴収する視聴料である。これによってNHKは、WOWOWやスカパーと同じ有料放送に近づく。

 

有料ネット放送はNHK民営化への道

 受信料制度は、ラジオ時代の1950年にできたものだ。当時は特定の人に電波を止めることはできないので、国民から広く徴収する制度が必要だった。

 受信機を設置するとNHKと契約する義務が発生するが、受信料を支払う義務はないという制度は、占領軍と日本政府の行き違いから生まれたものだが、最初はその矛盾に気づいた人は少なかった。当時は放送局といえばNHKしかなかったからだ。

 しかしテレビが爆発的に普及して民放が各地にできると、「テレビはもっているが民放しか見ない」という人が出てきた。特にNHKが自民党寄りだと批判する人々がNHKの不払い運動を始め、各地で訴訟が起こった。

 これについては最高裁判所が「受信料制度は憲法違反ではない」という判決を出したが、NHKが受信料を徴収するには民事訴訟が必要だという判決も確定した。全国の不払いに訴訟を起こすコストは膨大だが、NHKは受信料制度を変えることができない。それはこの問題に手をつけると、NHKの経営問題に発展するからだ。

 NHKは(2018年12月に始まった4K、8Kの2波を含めて)テレビ6チャンネル、ラジオ3チャンネルも電波をもつ、世界有数の巨大放送局である。本当にこれほど多くの電波が必要なのか。ニュースや災害報道は必要だが、多額の経費のかかる娯楽番組をNHKがつくる必要があるのか。ごくわずかの人しか見ていない教育番組は、ネットで十分ではないか。

 BSのような認証技術があるのだから、今の曖昧な受信料制度ではなく、見た人だけが払う有料放送にすべきだ——こういう批判は昔からあり、NHK経営陣が受信料制度をいじろうとすると、経営形態の見直し論が出てきて、NHKがあわてて火消しに走る繰り返しだった。

 政治家も、今の中途半端な経営形態のほうがNHKの経営に介入しやすい。毎年2月に行われるNHKの予算審議では、全会一致で予算を承認する慣例なので、NHKは自民党から共産党に至るまで文句がつけられないように配慮して番組をつくらなければならない。

 しかし受信機がPCやスマホに拡大されると、カネを払っていない人はブロックできるので、NHKは民営化するのが合理的だ。多すぎるチャンネルも整理して、総合テレビは24時間ニュースにすれば、民営NHKは超優良企業になるだろう。これが民放連(日本民間放送連盟)の恐れることだ。

 

日本のコンテンツ産業が生き残る道

 インターネットに日本が取り残された原因はインフラではなく、コンテンツが既存メディアに囲い込まれたまま流通しないことだ。特にテレビ番組のネット配信を禁止している先進国は日本だけである(日本は著作権法で実質的に禁止している)。

 そのボトルネックは、NHKが特殊法人として強い規制を受け、自由なビジネス展開ができないことにある。かつて島桂次会長は、NHKを実質的に民営化する路線を推進した。彼は住友銀行の磯田一郎会長と組んで、NHKエンタープライズを中心にしてNHKの民営化を進めた。

 島は放送法の制約なしにグローバル展開を進め、ルパート・マードックの向こうを張って世界のメディア王になることを目指したが、1991年に失脚した。結果的には彼の構想がバブル的だったことは否めないが、「映像ビジネスが地上波に閉じこもっていては未来はない」という彼の大局観は正しかった。

 2003年から始まった地上デジタル放送は、インターネット革命を拒否してテレビ業界を守る時代錯誤の国策プロジェクトだった。おかげで日本の産業はインターネットに乗り遅れ、競争力を失ってしまった。

 残念ながら日本がこの遅れを今から挽回することは不可能だが、せめて日本が比較優位をもつコンテンツの分野で、イノベーションを進める必要がある。そのためには今回のネット配信をきっかけにして受信料制度を見直し、NHKの経営の自由度を高めるべきだ。

 NHKを政治のおもちゃにしたのは自民党だが、それにを進めてきたのは民放連である。彼らは「NHKの肥大化は民業圧迫だ」と反対してきたが、圧迫すべき民業は存在しない。いまだに民放はネット配信をしていないからだ。

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