厚生労働省、がん拠点病院指定要件見直し どこでも均質な治療を

 

厚生労働省は全国に400以上あるがん治療の拠点病院の指定要件を改める。大部分が指定の更新期を迎える2019年度から実施する。免疫治療などの自由診療を事実上、制限するほか、拠点間の格差を踏まえた新分類も導入する。いつでもどこでも安心して、一定水準のがん治療を受けられるようにするのが拠点病院の目標だが、達成は容易ではない。

40代の男性会社員は区の健康診断で実施した検便で潜血反応が見つかり、「要精密検査」となった。区がリストアップした自宅近くの小さな病院に相談し、良性ポリープとわかったが、がんで転移も確認されていたら、より高度な検査や治療が必要だった。診療実績が豊富な、地域の比較的大きな病院を紹介されていたはずだ。そこでも手に負えなければ、都道府県に1つ程度のより高度な治療が可能な病院に行っただろう。

この場合の「地域の比較的大きな病院」が、市や郡に1つ程度ある「地域がん診療連携拠点病院」にあたる。都道府県に1つ程度整備されているのが「都道府県がん診療連携拠点病院」だ。国が指定し、補助金や保険点数の加算がある。

規制に批判も

 拠点病院の目的は日本人に多い肺がん、胃がん、肝臓がん、大腸がん、乳がんなどについて全国どこでも同水準の良質な治療を受けられるようにすること。いわゆる「均てん化」だ。

今回の指定要件見直しの目玉の一つは手術、抗がん剤、放射線に続く「第4の治療」と呼ばれる免疫療法の事実上の規制強化だ。保険適応外の免疫療法は、原則として薬事承認を目的とした治験や法律に基づく臨床研究とする。

地域連携拠点の国立病院機構鹿児島医療センターがベンチャー企業テラの技術を使い、自由診療で免疫療法をしたことが報道されたのが見直しのきっかけだ。厚労省の調査によると、昨年4~8月に同センターを含む84施設で保険適応外の免疫療法をしていた。

「民間では10年以上も免疫療法が実施されているのに、いまさら何を問題としているのか」。米国シカゴ大学の中村祐輔教授はあきれる。国立がん研究センターなどが早くから治療の効果や安全性のデータを集めていれば、科学的根拠に基づき免疫療法を適切に提供できていたはずだとみる。

全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は「わらにもすがる思いの患者に自由診療で詐欺に近い治療をしているところが多い」と指摘。拠点で「臨床研究をしっかりやってほしい」と訴える。鹿児島医療センターは計112人を治療し、すべて終了した。がんの種類や進行状況がばらばらのため臨床研究を断念。今後、他病院と共同でデータ分析などを進めたいという。

地域格差根強く

 がんの拠点病院で指定が取り消された例はない。全体として質が上がった結果だろうか。

全国の拠点病院の整備計画に長く携わってきた静岡県立静岡がんセンターの山口建総長は、「格差は厳然として残っている」と認める。地域や病院の規模による治療やケアの実績の違いは埋めようがない。

静岡がんセンターのロビー階では「よろず相談」コーナーが目を引く。専門の相談員が常駐し、時間無制限で患者らの悩みを聞き疑問に答える。これをモデルに全国に「相談支援センター」が広がり、拠点病院の指定要件にもなった。出張相談もある。しかし、ここまでできるのはまれだ。

厚労省も「格差」の存在を認め、19年度の指定から拠点病院の分類を増やす。地域連携拠点病院の上位の「地域がん中核拠点病院」と、指定取り消し候補ともいえる「準地域がん診療連携拠点病院」(ともに仮称)を新設する。

日本のがん治療の総本山ともいわれる国立がん研究センター中央病院の西田俊朗病院長は「競争原理が入り医療水準を底上げできる」とみるが、厳しすぎれば指定を返上する病院も出るだろう。医療過疎地など、頼れる病院がこれまで以上に絞られる懸念もある。同センターを中心に、病院間の連携で格差を補う仕組みづくりの重要性が増す。

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