北極海の資源・軍事…動き出す国家間競争

 

 北極海の漁業資源を10カ国・機関で共同管理する協定が5月、国会で承認された。対象となる領域は北極海中央部の公海だ。地球温暖化で北極の氷が減少し、これまでは難しかった船の航行ができるようになると、各国が資源獲得や軍事面で関心を寄せ始めた。ロシアや米国などの沿岸国に加え、中国も積極的に開発競争に乗り出す。氷が解けて日本も新たな外交戦略が必要になってきた。

北極海を横断する北極海航路の東側の玄関口にあるのは千島列島だ。ロシアは近年、この地域の軍備を大幅に強化している。千島北部のパラムシル島(幌筵島)や中部のマトゥア島(松輪島)、北方領土の択捉島と国後島に地対艦ミサイルを配備する計画を着々と進めている。

防衛省防衛研究所の兵頭慎治・地域研究部長は「北極の氷が減少し、ロシアは北極圏で軍事プレゼンスを強めている。千島列島の戦略的重要性も『北極ファクター』の影響で高まっている」と解説する。ロシアは今年1月、北極圏を極東発展省の所管とする方針を決定した。兵頭氏は「ロシアは北極と極東をひとつの地域として考えている」と指摘する。

ロシアが北極と極東をつなげて守りを固めるのは、北極海航路が同国の安全保障や経済にとって非常に重要だと判断しているからだ。プーチン大統領は今年1月、安倍晋三首相と会談した後の共同記者会見で「北極海航路の展望も話し合った。液化天然ガス(LNG)をアジアに輸出するためのものだ」と強調した。会談では首相に直接、積極的な協力を呼び掛けた。

北極海では何が起きているのか。長年、北極海の研究に携わってきた東京海洋大の島田浩二教授に聞いた。「かつては夏も解けない万年氷だったが、温暖化の影響で、解けかけのアイスクリームのように夏場に周りだけ氷が解けるようになった」と話す。毎年夏に解け、冬に凍るいわゆる「1歳の氷」が増えたという。

万年氷が消えると、季節によって新たな海流が生まれる。流氷が積み重なって氷が解けにくい場所も新たに生まれる。衛星を使って北極全体の氷の状態を観測することは一気に難しくなった。

島田氏は北極海航路を船が運航するには氷の状態の予測が重要だと指摘する。氷の解け具合などの予測モデルを研究している。

南極では半世紀前、どう利用するかの国際ルールができた。南極条約だ。南極は厚い氷の下に大陸があり、各国の領土的な関心も高かったからだ。氷の下に大陸がない北極に関しては、近年までこうした機運は生まれなかった。氷が解けて船が動けるようになり、資源開発や航路として注目を集めるようになった。

 

日本が5月に承認した漁業の協定はその一環だ。ロシア、米国、カナダ、ノルウェー、デンマークの沿岸5カ国に日中韓などが加わり、公海での漁業のルールをつくった。

国連海洋法条約では、各国の排他的経済水域(EEZ)に属さない公海はすべての国に開放される。資源を管理しようとする意識が公海では希薄になりやすい。

5月に承認された協定によって、対象海域では漁業に関わる国が条約を結んで資源を管理する機関を立ち上げることになる。さらに漁業に乗り出す国が増える前に、関係国でルールをつくった。

こうした取り組みはエネルギー開発など他の分野にも広がる可能性がある。中国への警戒が各国内で高まっているためだ。中国は2018年、北極での基本政策をまとめた「北極政策白書」を初めて公表した。北極海を「氷上のシルクロード」と位置づけ、デンマーク自治領のグリーンランドやアイスランドと共に資源開発を始めた。

関係国には中国の旺盛な進出意欲は脅威に映る。日本政府関係者は「近年、ロシアが軍備を強化しているのは表向きは米国にらみだが、中国への疑心暗鬼も確実に背景にある」と話す。

米国も動く。18年8月に成立した国防授権法には北極戦略の策定を盛り込んだ。現在、具体的な戦略づくりを進めている。米国は中国やロシアと経済や安保面で対立しているが、北極海もそうした衝突の舞台になる可能性がある。

ヤマルから北極海航路を通って中国に入港した商船三井の砕氷LNG船(ロシア北部サベッタ港で)=共同

ヤマルから北極海航路を通って中国に入港した商船三井の砕氷LNG船(ロシア北部サベッタ港で)=共同

日本は13年から北極圏8カ国の枠組み「北極評議会」にオブザーバーとして参加している。外務省に北極担当大使を設置した。政府内では北極研究のために独自の砕氷船を造る計画もある。北極圏近くでロシアが検討しているLNG開発プロジェクトに日本企業を参加させる案もある。北極海航路の整備は、中東に依存するエネルギー調達を分散させる効果もある。

ロシアは極東開発などで日本に期待を寄せており、米国はトランプ大統領と安倍首相の個人関係を基盤に日本と緊密だ。米ロ双方と対話できるいまの立場は国際的に意味がある。この独自性を北極でも発揮できるかが焦点だ。

■記者の目・日本地図では見えない世界

日本人は同じ極地でも、昭和基地がある南極大陸の方に関心を寄せてきたといえる。小学校で「しらせ」による南極観測の話を習った人も多いだろう。極地の研究者も実績と伝統がある南極を対象にする人が多く、北極研究に足を踏み出す人は少ないといわれている。ロシアが投資を呼びかける北極海沿岸のヤマル半島は、日本人にはぴんとこないほど遠い地域に映る。

だが日本の外交戦略上、いまは南極より北極の方が圧倒的に重要なのは明らかだ。ロシアの地図で北極海航路をたどると、北極海沿岸から千島列島に至る一帯はつながっている。これは日本地図だけみているとなかなか分からない。ロシアが北極海をどう考えるかは、日ロの平和条約締結と北方領土交渉にも影響する。今後は北極海の視点も日本には不可欠だ。

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